諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます

「あはは、コバは、本当に女性には冷たすぎだろう。はあーおもしろ」

「うるせぇよ。早くビール呑もうぜ! ってか、俺の分、ちゃんとあるだろうな」

 右足を床に叩きつけてコバさんは、ビールのポーズをしていた。

 くるみさんは顔を上げて私たちを見下ろすようにして伺っていた。

「私の分もあるでしょうね? コバだけあるなんてヤダわよ」

「……お前ら。自分のことばっかり。陽琉も一緒に呑まないか?」

 松岡さんは、コバさんとくるみさんの話を無視して私の方を見て言っていた。

 コバさんとくるみさんは、私のことを見てきた。

「え、あ、え」

 松岡さんは、私の様子を見て可笑しいと思ったのか、周りを見始めた。

「お前ら、陽琉を見るんじゃないよ。困ってんじゃないか」

「えー? 陽和、ズルイ。陽琉、ばっかり。私の彼氏なのに」

 くるみさんは、甘い声で松岡さんの右腕をがっしりと掴んでいた。

「くるみ、俺はお前の彼氏になった覚えなんてないぞ」
< 118 / 197 >

この作品をシェア

pagetop