諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます
「あはは、コバは、本当に女性には冷たすぎだろう。はあーおもしろ」
「うるせぇよ。早くビール呑もうぜ! ってか、俺の分、ちゃんとあるだろうな」
右足を床に叩きつけてコバさんは、ビールのポーズをしていた。
くるみさんは顔を上げて私たちを見下ろすようにして伺っていた。
「私の分もあるでしょうね? コバだけあるなんてヤダわよ」
「……お前ら。自分のことばっかり。陽琉も一緒に呑まないか?」
松岡さんは、コバさんとくるみさんの話を無視して私の方を見て言っていた。
コバさんとくるみさんは、私のことを見てきた。
「え、あ、え」
松岡さんは、私の様子を見て可笑しいと思ったのか、周りを見始めた。
「お前ら、陽琉を見るんじゃないよ。困ってんじゃないか」
「えー? 陽和、ズルイ。陽琉、ばっかり。私の彼氏なのに」
くるみさんは、甘い声で松岡さんの右腕をがっしりと掴んでいた。
「くるみ、俺はお前の彼氏になった覚えなんてないぞ」