諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます
「……」
笑顔で話しかけてきた母親は右手にのど飴を持ち、私にのど飴を渡そうとしていた。
私は靴を履いて、後ろを振り返って母親と向き合った。
「どうしたの? 持ってきなさい」
「いらない」
「どうしたの? いつもは持ってくじゃない」
「いらないって! 私はのど飴なくたって頑張れるから、母さん。私は私なりに頑張ってるから。自分の手で掴んでくるから」
睨めつけるように母親を見てから、外に出た。
母親は私のことを呼んでいたが、そんなの気にしなかった。
自分がやりたいと思える仕事を見つける。
それを叶えるために私は前を向いて、真っ直ぐに背筋をピンと伸ばして歩いた。