諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます
林総理大臣はそう言い、彼との別れなど気にしない女性秘書は早くと言われながらも林総理大臣は車に乗り込んだ。
彼は林総理大臣の乗る車を見えなくなるまで見ていた。
私はその姿をジッと見ていた。
ただ松岡さんの横顔は何を考えているか分からなかった。
でもそれはまるで、子どもに戻っているかのように幼い顔をしていた。
私はただ松岡さんを眺めていた。
声をかけることもなく、松岡さんを眺めているだけが精一杯だった。
彼は涙を流すこともなく、真っ直ぐな道をひたすら見つめているだけであった。
しかし、松岡さんの目は前を向いている気がした。
「……陽琉、ありがとう」
彼は古本屋『松岡』に入り、私に礼を言った。
「いえ、大丈夫ですよ」