諦めた夢を古本屋『松岡』が叶えます

そう言ってから、松岡さんは私の右肩に顔を乗っけてきた。

「あの……まつ……おかさん」

「一分間だけジッとしてて。エネルギー補給」

 腰に手を回すこともなく、松岡さんの手はぶら下がっていた。

「五九……」

彼が数を数えていたら、三時のおやつを欲しがるかのように彼女達は帰ってきた。

「ひよっち。ちょっと聞いてよ。くるみがさ、なんか俺にカメラの指導交渉した理由がさ。面白いんだぜ―昇哉さんとそんな関係になっているとは」

「ちょ、ちょっと違うからね。陽和。私は何も言ってないからね。あんな、馬鹿コバのこと信用しないでよ」

 私たちは、すぐに離れた。

コバさんとくるみさんはやってきたが、言い争っていた。

来てすぐに言い争っていたので、私たちの行為には気づかなかったようだ。

 でも良かった、見られていなくて。

私はホッとした。

だが、まだ私の右肩には感触が残っていた。

右肩に触ると、胸がドキドキしていて、彼が近くにいる感じがした。
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