ブロックノイズ
360度見渡す限りの緑。800人の参加者がいるにも関わらず誰も見当たらないほど広大な森。
そこにポツンとたたずむ夏希、ロゼ、そして男。三人だったことを今初めて知った。
いざ始まると想像してたものと違ったのだろうか、普段うるさいロゼも今は口を開こうとしない。腕を組んだまま澄ました表情で虚空を見つめている。

「どうする?とりあえずどうにかしてアイツ探す?」

「…………」

うるさいロゼもイヤだが、全く喋らないロゼもこれはこれで気持ち悪さがある。おそらく夏希にとってちょうどいいロゼというのは存在しない。アツアツかキンキンの両極端だ。
そんなロゼの顔を見ていると何かに気がついた。
顔の輪郭が妙に赤みがかっている。いや、全身になにか赤いオーラのようなものを纏っているように見える。

「あーなるほど、ルノアが言ってたのはコレ…」

「どうも初めまして」

「あ…どうも」

夏希の言葉を遮るように割って入ったのは初対面の男。夏希より少し背が低く茶髪で童顔のその男は満面の笑みを浮かべて夏希とロゼに会釈をする。

「早速なんですが、私の能力はなんでしょうか?」

「えーっとね…」

夏希がその男の目を凝視しようとしたその時だった。
ずっと大人しくしていたロゼが男の元へ歩き出す。

「やっと動きましたね、すみませんが私の能力を見ていただいてもよぼろっ!」

「……え!」

満面の笑みを向け丁寧な言葉で話していたその男の顔をロゼは無言で右脚で蹴り飛ばしたのだ。
突然の出来事にガードをする暇もなかったのだろう、右脚を顔の左半分に思い切り食らった男はそのまま地面に叩きつけられ、動かなくなった。

「よしOK、リーナちゃんを探しに行くぞ」

「いやいやいやいやちょっと待て!なんでいきなり蹴り入れた!?」

「………信用出来ねーから」

地面に突っ伏し動かない少年を一瞥し、キッパリとそう言い放った。

「信用もクソも、まだ何も…」

「名前も名乗らず、真っ先にてめぇの能力を知ろうとした。仮にそいつの能力が当たりもんだったらその瞬間俺たちは“ソレ”によって殺されてたかもしれない」

「それはつまり…」

「リーナちゃんも安易にメンバーの能力を明かすことで既に殺られてる可能性も充分あるってこと」

「なーるほどねー、お前ただのバカじゃなかったんだな」

「は?…俺バカっぽいところなんて見せたことあったか?」

「…………ごめん、なんでもない」
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