ブロックノイズ
「その男性についてなのですが、このようなことを言っているそうです」

軽めの朝食をゆっくりと胃に流し込む夏希はマグカップ片手にテレビを横目で見つめる。

「“ようやく地獄から抜け出せた”と。現在この男性は精神病棟で安静にしているとの事なのですが三島さん、この発言をどう捉えていますか」

オカルト研究協会の重鎮、三島秀幸。9歳の頃、人間が青い光の粒になって消えていく様子を目撃したことがキッカケでオカルトに興味を持ったらしい。それから10年、あらゆる現象を研究するために超常現象協会に入会。

「そうですねぇ、この男性はいわゆる“10代神隠し”が昭和以降3番目に多いとされる40年前の1978年に行方不明になった一人なんですね」

「…えぇ」

聞いたことのないワードに戸惑いつつ流していく若手アナウンサー。その反応を見逃さなかった三島だが、間を置いて続ける。

「…当時12歳だったこの少年が、40年間生き延びたなんてね奇跡としか言いようがない」

「えぇ」

「それにね、精神を患ってる人間が1人でそんなに…普通考えられないですよ」

「なるほど」

「つまり、どこかに地獄とも言うべき行方不明者の集会所のような施設が存在してると思うんです。大神さんはおそらくその施設から脱出した人物であると私は考えておりますね」

「地獄のような施設の事ではないかと…なるほど、発見された大神人志さんについてでした。ではお天気です__」

結局オカルト研究者らしからぬ現実的な推測に終わった。

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