ブロックノイズ
遅刻を確信した夏希は小走りをやめ、両手をポケットに入れゆっくりと歩く。通勤ラッシュの車とは違い、夏希は青信号が点滅しようが少しも急がない。小叱りを受ける程度で済む学生の特権と言わんばかりの、むしろ高みの見物だ。
少し時間がズレただけで誰ともすれ違うことのないサクラロード。
別にそういう名前ではないのだが、近辺で桜の名所が大通りから外れた川沿いのこの道しか無いため勝手にそう呼んでいる。
住宅街とも離れたこの場所は毎年花見客で賑やかになる。
時計は8時40分を指している。遅刻5分前だが学校はまだ遠目にすら見えていない。
あの変なタイミングでプレゼントを渡され談笑なんてしなければ遅刻ギリギリくらいには間に合ったのではないか。そんなことを考えながら右手でポケットの中の御守りをひたすらいじり学校を目指す。
「うわぉ、蛍?」
快晴で直射日光が眩しいにも関わらずキラキラと光る蛍の群れが突然自分を取り囲む。
少し時間がズレただけでこうやって蛍さえも……いや、何かがおかしい。
手で振り払おうとするも、光るものに実体が無いため触れることが出来ない。これは蛍ではなく光そのものだった。
光に視界を遮られ気づくのに遅れたが、両手が消えていた。
自分の体が光となって散っていく様子を、言葉も出ないままに目の当たりにした夏希は意識が朦朧としていくのを感じた。
そして夏希の姿は消え、カバンだけが道のすみに転がっていた。
少し時間がズレただけで誰ともすれ違うことのないサクラロード。
別にそういう名前ではないのだが、近辺で桜の名所が大通りから外れた川沿いのこの道しか無いため勝手にそう呼んでいる。
住宅街とも離れたこの場所は毎年花見客で賑やかになる。
時計は8時40分を指している。遅刻5分前だが学校はまだ遠目にすら見えていない。
あの変なタイミングでプレゼントを渡され談笑なんてしなければ遅刻ギリギリくらいには間に合ったのではないか。そんなことを考えながら右手でポケットの中の御守りをひたすらいじり学校を目指す。
「うわぉ、蛍?」
快晴で直射日光が眩しいにも関わらずキラキラと光る蛍の群れが突然自分を取り囲む。
少し時間がズレただけでこうやって蛍さえも……いや、何かがおかしい。
手で振り払おうとするも、光るものに実体が無いため触れることが出来ない。これは蛍ではなく光そのものだった。
光に視界を遮られ気づくのに遅れたが、両手が消えていた。
自分の体が光となって散っていく様子を、言葉も出ないままに目の当たりにした夏希は意識が朦朧としていくのを感じた。
そして夏希の姿は消え、カバンだけが道のすみに転がっていた。