溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「京介さん、無理です」
小声で拒否を示したものの、京介さんは「大丈夫だから」と引き返す様子がまったくない。
本当に勘弁してほしい。
半ば引きずられる格好で、静かな廊下を進んでいく。
そして、とうとう目的地へ到着してしまったようだ。
京介さんが足を止めて咳ばらいをした。
「母さん、失礼します」
ひと言断りを入れて引き戸を開けると、中から「あら、京介」と声がした。
瞬時に引き戸の影に身を隠す。
堂々と顔見せができるほど、肝は座っていない。
それもこれも、吐いてしまった嘘のせいだ。
彼のお母様は直接的には経営に携わっていないものの、監査役という役職に就いている。
ただ、出勤という形はとっていないため、姿を見るのは今日が初めてだ。
「昼間はごめん」
「仕事中だったの? 大事な話があるのに、さっさと切っちゃうんだから」
ホテルにいたときに電話をしてきたのは、お母様だったのかもしれない。
「いや、実は……」
そこで言葉を止めて、京介さんが私を見る。