溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「母さんに紹介したい女性がいるんだ」
京介さんに向かって首を横に振る。
口パクで「無理です」と何度も言ってみた。
ところが、彼はそんなこともお構いなしに私の腕を引っ張った。
少し無様なステップを踏むかのように、京介さんの隣に立たされる。
お母様が驚きで息を飲むのをはっきりと感じた。
「川上ナオミさん。今、付き合っている女性です」
「……初めまして、川上ナオミと申します」
俯いた状態で頭を下げたあと、顔をゆっくりと上げる。
私の目の前に現れたのは、品のある少しふくよかな女性だった。
涼子さんとは、双子だと言われても納得できないくらい似ていなかった。
なによりも違うのは威圧感だ。
柔らかな印象の涼子さんとは正反対。
涼子さんが『陽』だとしたら、お母様は『陰』。
醸し出す空気感も鋭い。
お母様は虚を突かれたような表情をしたあと、観察するかのように私をじっと見た。
冒険ファンタジーゲームのダンジョンに現れたラスボスみたいだ。
あまりの存在感に圧倒されて膝が震えてきた。
「京介の母です」
穏やかに聞こえる声とは裏腹に、私に突き刺さる視線が痛い。