溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛

◇◇◇

それからしばらく経った、ある朝のことだった。
まだ誰も出勤していない企画部でデスクを拭いていると、岸本部長のところに置いてあった書類に目が留まる。

クリアファイルに入れられたそれは、新規開発に関するものだった。
新たに建設されるうちのホテルのようだ。

どこに建てるんだろう。
新規のホテルは五年ぶりくらいだ。
なんとはなしにクリアファイルから取り出し、数枚ある資料をめくっていく。
サーッと斜め読みをしていると、あるページで引っ掛かる文字を見たような気がした。
もう一度戻って、今度はゆっくりと目を進めていく。

……え? 嘘。

見間違えかと思い、眼鏡の下の目をこする。
そして再びその文字に焦点を合わせた。

――やだ、どうして。
見間違えなんかじゃなかった。


「どうかしましたか、上川さん」


岸本部長だった。


「あ、ぶ、部長。申し訳ありません、勝手に」


慌てて書類をクリアファイルに入れてデスクへ戻す。

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