溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「いいんですよ。上川さんも企画部のメンバーなんですから。秘密にすることじゃありません」
岸本部長は穏やかな表情で自分の席に着いた。
「あの……この話はもう進んでいるんですか?」
「まだ着手した段階です」
「そうですか……」
中期経営計画の中にはなかった案件だ。
急に決まったことなんだろうか。
「なにか気になることでも?」
心配そうに私を見上げる部長に「いえ」と頭を下げ、雑巾を持って給湯室へと向かった。
この前、母親から電話が入ったのは、このことだったのかもしれない。
お昼休憩のときに要領を得ない電話があったことをふと思い出した。
あれは亜樹のいうような結婚の話題じゃなく、土地買収の話だったのだ。
両親が細々と経営している、海のそばの民宿の――。