溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
◇◇◇
その週末、私は実家へと帰ってきた。
京介さんと行った海とは違って、ここに岩場はない。
代わりにあるのは何キロも続く砂浜だ。
民宿“上川の浜”は海まで歩いて三分の立地にあり、二階の部屋からは白波が立つ浜がよく見渡せる。
自宅も兼ねる“上川の浜”は、二階に客室が五部屋のとても小さい民宿だ。
それでも毎年訪れてくれる常連さんはいて、夏は満室が続く。
子供の頃、私に夏休みというものはないに等しかった。
民宿の仕事を手伝わされるからだ。
両親だけでやっているため、書き入れ時の夏は人手が足りない。
おかげで、弟と私は、夏休みでも家族で出かけた記憶はない。
今の私が面倒くさがりになったのは、そのときの反動なんじゃないかと密かに思っている。
「手伝いにでも来てくれたのか?」
お正月やお盆以外に帰省しない私を珍しがって、父は目を丸くしていた。
潮干狩りのシーズンが過ぎて、落ち着いている頃だろうに。
来客用の靴箱を見たところ、お客さんらしき靴は見当たらなかった。
「でも、暇でしょ?」
私の手伝いは必要ない。