溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「それで、いったいどういう風の吹き回しなの?」
「どういうって……」
向かいに座ったふたりは、お昼ご飯はなににしようかと話しながら、ついでのように私に聞く。
「この辺一帯が買収されるって」
「……あぁ、そのことね」
私のひと言で顔色が変わった。
ふたりで顔を見合わせる。
「この前、お母さんが私に電話してきたのもその件?」
「……美緒奈の耳にもなにか入ってるかなと思ったのよ」
やっぱり探りを入れてきたのだ。
ふたりの話すことには、民宿組合で一旦は買収反対を掲げていたそうだが、高額な立ち退き料を提示されたことで次第にメンバーが減り、今はうちだけが反対の立場をとっているとのことだった。
「長年暮らした場所を離れるのはちょっとねぇ」
そう言って、ふたりは頷き合った。
民宿を営むことしか知らないふたりから、この場所を取り上げるのは酷な話だ。
これからどうやって生きていけというのか。