溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
それなら本当のことを。
私は“ナオミ”じゃないと。
船上パーティーに潜り込んだ、身分不相応の女だと。
それなのに、それすら言葉になって出てこない。
京介さんが“騙された”と傷つく顔を見たくなかった。
悲しい顔をさせたくなかった。
……違う。そうじゃない。
私が傷つかないためなんだ。
悪い女だと思われたくないから。
これで最後なら、そんな印象で別れたくないのだ。
どんな理由だって、彼を悲しませることに変わりはないのに。
自分の腹黒さを思い知って、嫌になる。
こんな私は、やっぱり京介さんには不釣り合いだ。
「日本を離れるんです。両親と一緒に」
そんな陳腐な理由しか思いつかなかった。
「……日本を離れる?」
私を見つめる目が怪訝そうに揺れる。
「その準備でバタバタして、連絡ができなかったんです」
「着いて行く必要がある? 子供じゃないんだから、ナオミだけ日本に残ったっていい」
痛いところを突かれた。