溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「“ナオミ”はもう日本にいないことになっているから」
「どういうこと……?」
「家族と一緒に日本を離れるって副社長に言ったの。だから、もう私たちはなんでもないから」
「……別れたの?」
コクンと頷いた。
亜樹はどことなく安心したような表情になった。
ずっと心配していたのかもしれない。
彼と私がまだ繋がっているんじゃないかと。
でも、私のことを避けてしまった手前、直接聞くに聞けなかったのだろう。
私もずいぶんとあっさりしているかもしれないが、そうでもして割り切らないと気持ちの整理がつかない。
もともと叶うはずのない恋だったのだ。
通常モードにシフトしただけのこと。
「美緒奈、本当にごめんね。親の決めた見合い相手が、まさか副社長だとは思わなかったの」
「わかってる」
亜樹に非はない。
「……ごめん」
彼女は何度も何度も謝った。
『お金持ちなら誰でもいい』と言っていた亜樹だが、『それが副社長みたいな人だったら万々歳だ』と言っていたことを思い出した。
それがその人本人だったのだから、亜樹は願いを叶えたのだ。
羨ましくないといったら嘘になる。
でも、これが現実。
身の丈に合った恋をしなさいと神様に言われているように感じた。