溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
頼りなくも強い決意


慌ただしく二週間が過ぎていった。

勤務時間中は身体を使う仕事ということもあって、余計なことを考えないで済んでいる。
夏休みシーズンで通常より忙しいことも幸いしていた。
朝出勤してから瞬く間に時間が過ぎ、あっという間に一日が終わる。

更衣室で制服から私服へ着替えていると、ドアが開けられて「上川さん、まだいますか?」と私を呼ぶ声がした。


「はい、います」


返事をしてから急いでスカートを履き、入口へと向かう。
するとそこにいたのは井森さんだった。
彼女は私を見て、「あぁ、もう着替えちゃったよね」とガッカリした。


「どうかしたんですか?」

「実は今フロントから連絡が入って、客室にいらっしゃるお客様から上川さんを部屋までよこすように要請があったそうなの」

「……私を客室まで、ですか」


ル・シェルブルでは、客室清掃後に担当名の入ったメモを残しておく決まりになっている。
責任を持って清掃をしたとの意味を込めたものだ。
私をわざわざ呼ぶということは、もしかしたら部屋になにか不都合があったのかもしれない。
つまり、苦情だ。

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