溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
嫌な予感が胸をかすめた。
それは井森さんも感じたようで、「私も一緒に行きます」と言ってくれた。
もしも苦情なのだとしたら、それは私の責任だ。
「まずは私ひとりで行ってみます。お客様がそれで納得されないようでしたら、そのときは井森さんに助けをお願いしてもいいですか?」
井森さんはしばらく考えるような素振りをしたあと、「わかったわ」と了承してくれた。
とにかく早く向かわなくては。
苦情処理でお客様をお待たせすることは厳禁だ。
急いで更衣室を出て、指示された客室へと向かう。
入社して現場へ配属されたときも、本社にいたときも、何度かお客様から直接意見を聞くことはあった。
初めてではないとはいえ、どうしたって緊張してしまう。
どんなお客様なんだろう。
男性か、女性か。
せめて、それくらいの情報は仕入れておけばよかった。
心細さをなんとか抑え込み、部屋のチャイムを鳴らす。
「客室係の上川でございます」
ドアに向かって名乗りを上げた。
少しすると扉が開けられる気配がしたので、頭を下げて待つ。