溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「ここまで俺が言っても、まだシラを切り通す?」
京介さんが私の身体を反転させる。
私の掛けていた眼鏡を外し、玄関の飾り棚の上に置いた。
驚きのあまり言葉を失う私の顎を持ち上げ、彼が真っ直ぐに私を見つめる。
「それなら、こうするまでだよ」
唇が押し当てられた。
離れようと胸を押しやっても、ビクともしない。
しばらく抵抗を試みていた私も徐々に力が抜け、いつしかそのキスに応えていた。
懐かしさに胸が震える。
ひとしきりそうしたあと離れた唇で、彼が「やっぱりそうだ」と言った。
泣き笑いのような顔だった。
「……ごめんなさい」
もうそれしか言えなかった。
胸の奥がぎゅっと締めつけられ、鼻がツンとしてくる。
奥歯を噛みしめて堪えても、涙が溢れてしまった。
騙した方が泣くなんて卑怯だ。
慌てて目を拭い、涙の痕跡を消す。
「潜り込んだパーティーで副社長と会うとは思いもしなくて。私が上川美緒奈だと気づかないことをいいことに、つい嘘を吐いてしまったんです……。ひとつ嘘を吐いたら、それを隠すためにもうひとつ嘘が必要で。嘘だとわかったら、もう会えなくなると必死でした。でも、それが京介さんのお母様に……」