溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛

「え……あ、はい、わかりました。では“芹川さん”と」

「やっぱり“舞子”でいいわ」

「え……?」

「聞こえないかしら。ファーストネームでいいと言ってるのよ。どうせ今日限りで会うこともないでしょうから。今日だけ我慢して差し上げるわ」


高らかに宣言すると、お母様――舞子さんは歩き始めた。


「あの、どちらへ」

「まだ開演まで時間があるから、グッズを見に行くのよ」

「グッズ……」


歌を聴くだけじゃなく、そういったものも買うタイプだとは。
もしや、『ここからここまで全部くださる?』というセレブの決め台詞を聞けるのでは。


「ほら、いらっしゃい」


私を視界の隅に留める程度に振り返り、つんと前を向いて歩き出す。


「は、はい!」


その背中を急いで追いかけ、侍女のように控えめに寄り添った。

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