溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
◇◇◇
照明を落とされていた会場内が明るくなる。
すると、今まで興奮に包まれていたのが嘘だったかのように、急に現実へと引き戻された。
「お帰りの際はお足元に十分ご注意の上……」
アナウンスが流れる中、舞子さんと私は出口へ向かう人の波に乗った。
「舞子さん、とっても良かったです! 私、感激しました」
「やだ、あなた、もしかして初めてだったの?」
「あ、はい……」
会場に入る前に“大好きアピール”をしていたことを思い出して、肩身が狭くなる。
三十年以上にわたって活動しているアーティストだけあって、ファンの年齢層は高めだ。
私が物心ついたときにはすでに有名だったアーティストなので、もちろん歌は知っている。
それでもファンになるほど好きだったわけでもないのに。
今日、初めて生の歌を聴いて、演出に趣向を凝らしたステージを見て、一気に好きになってしまったのだ。
「調子のいい人ね」
半ば呆れ顔で舞子さんは笑った。