溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「なにか不満なの? すっかりファンになったみたいだから好意で言っているのよ」
言い方こそきついが、少し前まで私に向けられていた嫌悪感はまったく感じなかった。
「はい! よろしくお願いします」
私の答えに満足したのか、舞子さんは一瞬だけ口角を持ち上げた。
ルームミラーで合った京介さんの目が笑っている。
私たちのやり取りを楽しんでいるようだ。
「京介、私を涼ちゃんの店の前で降ろしてちょうだい。渡したいものもあるから寄りたいの」
「わかりました。それでは、涼子さんの店で食事にしましょう」
「あなたたちは、ふたりで好きなところにお行きなさい」
舞子さんの言葉に京介さんも私も虚を突かれてしまった。
私に至っては、一時停止ボタンでも押されたように固まる。
信号待ちで止まったところで、京介さんは舞子さんに体を向けた。
「それじゃ、美緒奈とのことを……」
「別に許すも許さないもないでしょう。一度ならず二度までも、お見合いの相手から断られるなんて芹川家の恥になりますから。美緒奈さんがそんな京介がいいとおっしゃるなら、どうぞってところよ」
振り返った京介さんは、今までにない笑顔を浮かべていた。
「ありがとうございます!」
前を見たままの舞子さんに私はめいっぱい頭を下げた。