溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
私が紹介すると、お母さんは口も目も大きく開いて固まったあと、「ちょっとどういうこと!?」とおろおろし始めてしまった。
「どうして副社長さんがこんなところまで?」
何足もスリッパを出して並べる。
動揺ぶりは明らかだった。
騒ぎを聞きつけたのか、奥からお父さんが顔を出してきた。
「お父さん、大変よ、大変! 副社長さんなんですって! 美緒奈のところの!」
「なんだって!? 美緒奈の会社の副社長!?」
お母さん同様に声のトーンが上がる。
並べたスリッパをどういうわけか、片づけ始めた。
「ちょっとふたりとも落ち着いてよ」
にっちもさっちもいかなくなったふたりをなんとか宥め、京介さんには家にあがってもらった。
引っ越し準備のためか、通した座敷には畳まれた段ボールがいくつも置かれている。
これから忙しない引っ越し作業が始まる。
麦茶の入ったグラスには、さざ波が立っていた。
お母さんの手が震えていたせいだ。
「突然お邪魔してしまい申し訳ありません」