溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「それじゃ、結婚の承諾を得るために?」
「――違うよ!」
慌てて否定した。
さすがに話が飛びすぎる。
先走りすぎだ。
いくらなんでも、そこまで考えているはずがない。
「ゆくゆくはそう考えております」
「えっ……」
弾かれたように京介さんの横顔を見る。
すると彼は、私に優しい笑みを返してよこした。
京介さんと私が結婚……。
すぐには信じがたい未来が、突然目の前に開けてしまった。
それはまるで、雨上りの空にかかった虹のようだった。
「今回の買収の件につきましては、お父様とお母様には大変な気苦労をさせてしまい本当に申し訳なく思っております。まさか美緒奈さんの御実家が買収用地にあるとは思いもしませんでした」
「いえいえ。うちのことはもう本当に大丈夫ですから。ありあまるほどの立ち退き料もいただきましたし」
ふたりが顔を見合わせて頷き合う。
民宿“上川の浜”は、来年の秋には山のペンションとして生まれ変わる予定になっている。