溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「この辺一帯がル・シェルブルさんの開発で活性化するなら、長く住んできた私たちにとっても喜ばしいことです」
「恐縮です」
膝に手を置き、京介さんは深く頭を下げた。
「副社長さんさえよかったら、今夜うちに泊まっていかれませんか?」
「――やだ、お父さんってば」
京介さんをこんな古い民宿に泊めるわけにはいかない。
ベッドは小さいし、家族と共用のお風呂だ。
京介さんの普段の生活とはかけ離れすぎている。
「そんなの無理だから。副社長は忙しいの。無理に引き止めたら失礼だから」
それは建前上の理由だ。
本当はここへ連れてくることだって躊躇したくらいなのだ。
どうせ紹介するなら、新しいペンションが完成してからにしたかった。
「いいじゃないの、美緒奈。うちの最後のお客様としてできるかぎりのおもてなしをさせてもらうから」
お母さんまですっかり乗り気になってしまった。
「それでは、せっかくですからお言葉に甘えて」
「京介さん!」
思わずその腕を掴みにかかる。
すると京介さんは、私の手の上に自分の手を重ねた。
「大丈夫」
そう言って笑った。