溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
◇◇◇
「ささ、京介さん、もう一杯どうぞ」
お父さんが京介さんのグラスにビールを注ぐ。
最初は“副社長さん”だったのが、いつの間にか“京介さん”だ。
テーブルには、今朝釣って来たばかりのアジやヒラメを使った料理がところ狭しと並んでいる。
いつも以上に腕を奮ったらしい。
姿造りの刺身が、大きな船盛りとなってテーブルの上で存在をアピールしていた。
あまりお酒の強くないお父さんは、飲み始めて間もないというのに、もう顔が赤い。
あともう少ししたら、きっと呂律も回らなくなってくるだろう。
弱いくせに、宿泊客のお酒の相手をして酔いつぶれるのは、いつものことだ。
「京介さんのお口に合うかわかりませんけど、遠慮なさらずにたくさん食べてくださいね」
料理を全て出し終えたお母さんは、お父さんの隣に座って京介さんに勧めた。
「全部お母様がお作りになったんですか?」
「いやだわ、お母様なんて」
頬に左手を当て、スナップを利かせて右手を振る。
「料理は母さんの担当なんですわ」
お父さんが代わりに答えた。