溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
◇◇◇
二階の客間の窓を開け放つと、波の音に混じって松虫の泣き声が聞こえる。
まだ気温は高いものの、どこか秋の気配を感じる夜だった。
京介さんとお酒の進んだお父さんは、ご機嫌のまま居間ですっかり伸びてしまった。
寝室に運ぶのを面倒くさがって、お母さんはそのままそこで寝かせる算段をしていた。
窓辺でぼんやりと暗い海を眺めていると、不意に部屋のドアが開けられた。
京介さんだ。
「お湯加減はどうでしたか?」
「ちょうどよかったよ。お父さんはあのままで大丈夫?」
お風呂上りに居間で寝ているお父さんを見かけたのだろう。
京介さんはまだ濡れた髪の毛を拭きながら、心配そうな顔で私のそばへ立った。
ふわっとシャンプーが香る。
「いつもああなんです。心配いりません」
「お客さんともすぐに仲良くなるんだろうね」
京介さんが鼻にしわを寄せる。
「そうなんです。ちょっとグイグイいきすぎなんじゃないかって、いつもヒヤヒヤしていました」