溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
番外編①副社長室でナイショの……
頬杖を突き、人差し指でデスクをトントントンと叩く。
どこを見ているわけでもない。
宙のある一点をじっと見つめたまま、ついさっき耳に入ったことを思い返していた。
美緒奈がホテル勤務から企画部へと戻って一ヶ月。
恐れていたことがとうとう起こったかというのが、正直なところだ。
いつかこうなるだろうと思ってはいたが、実際に耳に入ってくると冷静ではいられない。
そのときふと、副社長室のドアがノックされ、秘書の柳川さんが入ってきた。
「副社長、コーヒーをお持ちしました」
にこやかな笑みを浮かべ、俺のデスクにカップを置く。
「ありがとう」
見れば、それはいつものブラックではなく、ミルク入りらしき色をしている。
不思議に思いながら彼女を見上げる。
「なんだか元気がないように見受けられたので、甘いほうがよろしいかと思いまして」
秘書にまで気を遣わせてしまうほど、露骨に態度に出ていたのか。
彼女は多分、“元気がないように”ではなく、“不機嫌そうに”と言いたかったのだろう。