溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
副社長の俺を相手にして、そうは言えないだろうから。
糖分を採って、気を落ち着けなさいということだろう。
「心配をかけてしまいましたね」
即座に笑顔で取り繕う。
俺が元気のない――いや、不機嫌な理由。
それは、社内で偶然聞こえてきた男性社員同士の会話のせいだった。
『企画部の上川美緒奈、最近すごく綺麗になったと思わないか?』
『ああ、俺もそう思ってた。少し前まで瓶底眼鏡の地味な女だったのに』
『あんなイイ女だとは予想外だよな。俺、アプローチしてみようかな』
『おいおい、俺もそう思ってたんだぞ』
美緒奈をネタにして、好き勝手に盛り上がるふたりは、しまいには『今夜誘ってみる』とまで言いだすほどに。
聞くに耐えなくなった俺は、自販機コーナーで飲み終えた缶コーヒーをゴミ箱に勢いよく投げ入れた。
威嚇するようなことをした直後に後悔が襲う。余裕をなくしすぎだと。
その音にこちらを振り向いたふたりは、副社長の俺がそこにいたことに初めて気づいたようだった。