溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
番外編②アブナイ露天風呂


「こちらでございます」


仲居さんに案内されて通された部屋に入ってすぐ、私の口から漏れたのは感嘆のため息だった。
荷物そっちのけで窓辺に走り寄り、外に広がる景色に見入る。

山の中腹に佇む高級老舗旅館。
その特別室から見える景色は、赤や黄色に染まった山の木々だった。
息を呑む美しさとは、このことだと改めて思う。
その光景を臨む露天風呂は、この部屋だけで独占するには贅沢なほどの広さだ。


「気に入った?」


後ろから京介さんに抱きすくめられた。


「はい、とっても」

「よかった。美緒奈の喜ぶ顔が見られて嬉しいよ」


耳元で囁かれて、くすぐったさに体をよじる。
すると、髪の毛をかきあげられ、首筋に唇が押し当てられた。


「あの……」


仲居さんの声にふたり揃ってハッとする。
その存在をすっかり忘れていた。
彼女は気まずそうにもじもじとしていた。

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