溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛

タクシーを降りたら、それまで。上川美緒奈に戻る。
そう思っていただけに、今私に舞い降りた展開が飲み込めなかった。

副社長は私をそっと引きはがすと、今度は優しい目で私を見つめた。


「ナオミさん、会ってくれるよね?」


拒否を想定していないような聞き方だった。
その眼差しに熱を感じて、逸らすことすらできない。

ひとつの答えしか、私にはもう残されていない気がした。
それ以前に、“ノー”は存在すらしていなかった。

また会える嬉しさに胸が震える。


「……はい」


思わず頷いた次の瞬間、唇にやわらかい感触が触れた。
数秒後それが離れたときに初めて、キスされたのだと気がついた。

ロープで全身を巻かれたように、身体が動かない。
目が合った副社長に微笑まれて、恥ずかしさに俯いた。

彼がおもむろに名刺を私に差し出す。
それならさっき船上でもらったばかりだと、手を出すのをためらっていると、彼はそれを裏返しにした。
そこには走り書きで数字が並んでいる。

< 42 / 255 >

この作品をシェア

pagetop