溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
タクシーを降りたら、それまで。上川美緒奈に戻る。
そう思っていただけに、今私に舞い降りた展開が飲み込めなかった。
副社長は私をそっと引きはがすと、今度は優しい目で私を見つめた。
「ナオミさん、会ってくれるよね?」
拒否を想定していないような聞き方だった。
その眼差しに熱を感じて、逸らすことすらできない。
ひとつの答えしか、私にはもう残されていない気がした。
それ以前に、“ノー”は存在すらしていなかった。
また会える嬉しさに胸が震える。
「……はい」
思わず頷いた次の瞬間、唇にやわらかい感触が触れた。
数秒後それが離れたときに初めて、キスされたのだと気がついた。
ロープで全身を巻かれたように、身体が動かない。
目が合った副社長に微笑まれて、恥ずかしさに俯いた。
彼がおもむろに名刺を私に差し出す。
それならさっき船上でもらったばかりだと、手を出すのをためらっていると、彼はそれを裏返しにした。
そこには走り書きで数字が並んでいる。