溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「ううん、そんなことはないよ」
思わず声が上ずる。
亜樹は見定めるように目を細めて私を見たあと、「こっちに移動するね」と離れたテーブルからトレーを運んできた。
「どうしてまた瓶底眼鏡なのよ。せっかくコンタクトにしたのに」
「……いや、その……面倒――」
「その言葉は禁止って言ったでしょ?」
亜樹にすぐさま遮られた。
眼鏡を外したところですっぴんなら副社長は気づかないだろうとは思うが、念を入れるに越したことはない。
ナオミが上川美緒奈だとばれるわけにはいかないのだ。
「LINEは既読にすらならないし、いったいどうしたのかって気になって仕方がなかったんだから」
やはり、あのパーティーのことを聞く気満々だ。
「それで、どうだった? 楽しかったでしょ?」
眼鏡をずり上げながら、なんて答えようかと迷う。
楽しかったのは間違いない。
ただ、そこに別の感情まで紛れ込んでいるから困るのだ。