溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「ほらね。行ってよかったでしょ? これで美緒奈にもようやく春の訪れだね。私も、頑張って美緒奈を変身させた甲斐があったってものだよ。それでどんな人? なにをやってる人? いい男?」
亜樹は食べかけの定食そっちのけで、私の方へ身を乗り出した。
目がキラキラと輝いて見える。
彼女の質問に、たったひと言で済ませられる答えを私は知っている。
でも、どうしたって言うことを躊躇う。
雲の上の人とはいえ、身近すぎるからだ。
「もしかして私の知っている人なの?」
いつまでも答えないせいで、かえって怪しまれてしまった。
「……うん」
「厚労省の牧田さん? あ、それとも北村参議院議員の政策秘書の内館さん? そういえば、三輪さんも行くって言っていたような」
亜樹が次々に名前を挙げていく。
当然ながら、私はどの名前にも首を横に振った。
「それじゃ誰?」
獲物を逃すまいというような目で亜樹が私を捕える。
そこまで追い詰められて答えないわけにはいかない。