溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
拒絶はできなかった。
「……京介、さん」
名前を呼ぶと同時に唇が重なった。
それから先のことは、よく覚えていない。
出された料理も涼子さんと交わした会話も、どこか霞がかかったようにぼんやりとしていて、ただ副社長だけを見ていた気がする。
待ち合わせたタワーマンションの前で車が停められると、副社長はシートベルトを外し運転席から器用に私を抱きしめた。
それすら避けることができない。
「ちょっと寄っていこうかな」
急に現実に引き戻され、私はパッと身体を離した。
「あ、あの……」
この場所に私の部屋はない。
嘘がばれるかもしれないという小さな恐怖が私の心臓を圧迫する。
どうしよう……。
指先が震える。
いっそのこと、本当のことを言ってしまった方がいいのかもしれない。
そうすれば、身分違いの恋心にケリをつけられるから。
わかっているのに、そのときを引き延ばしたい自分がいた。