溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
てっきり秘書が出るかと思いきや、『はい、芹川です』とコール二回で出たのは副社長本人だった。
不意打ちの声に胸がきゅっと縮まる思いがする。
「企画部の上川です。顧客情報管理システムのプレゼンを開始したいのですが……」
『あっ、そうでしたね』
私の言葉にハッとしたように返す。
姿は見えないが、慌てて腕時計で時間を確認している様子を感じた。
やはり忘れていたようだ。
「お忙しいところ大変申し訳ありません。よろしくお願いいたします」
受話器を置こうと耳から離しかけると、電話の向こうで副社長がなにか声を漏らすのが聞こえた。
もう一度耳に当てると、『上川さん』と私を呼ぶ。
「はい」
『……いや、なんでもないんだ。申し訳ない。知り合いにそっくりの声だったものだから』
京介さんの言葉に身体がこわばる。
みぞおちのあたりが落ち着かなくぞわぞわとした。
「あ、あの……」
口ごもってなにも返せない。