溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛

◇◇◇

副社長から『会いたい』と連絡が入ったのは、二日後のことだった。

待ち合わせは土曜日の午後。
『海へ行くからカジュアルな格好でおいで』と言われ、前日の仕事帰りに慌てて洋服を買いに行った。

店員に勧められるままにコーディネートしたのは、薄いピンクのストライプシャツにオフホワイトのチノパン。
五月半ばでも海では涼しいだろうと、薄い素材のトレンチコートを羽織ることにした。
亜樹がやってくれたようにはいかなくとも、ヘアメイクもなんとか完成させた。

チャイムを鳴らすから部屋で待つように言われたが、そうはいかない。
いつものごとくタワーマンションの前で待っていると、待ち合わせ時間きっかりに彼は現れた。

運転席を降り立った彼の顔を見て、どことなく不安を覚える。
眉間に皺を寄せ、なぜか切なそうに見えたのだ。
どうしたんだろうと心許ない思いでいると、彼は歩道に立つ私を即座に抱きしめた。


「……会いたかった」


そのひと言が私の心まで抱きしめる。
嬉しさに震えた。

彼の腕の力が強まっていく。
行き交う人の目が気になったのは数秒間だった。
恥ずかしさよりも、彼に会えた喜びが勝った。

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