溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
京介さんはチラッとこちらを横目で見て、少し寂しい表情を浮かべた。
悪いことをしてしまったと思ったものの、架空の会社を立ち上げるほどの機転は利かないし、ましてや本当のことは言えない。
周りに見える景色がビル街から緑の多い風景に切り替わっていく。
車の台数も徐々に減っていった。
高速を降りて一般道を走ること数十分、遠くに海らしきものと真っ白い灯台が見えてきた。
それだけで不思議とテンションが上がる。
思わず窓を開けると、乾いた風の中に潮の香りも混じっている。
「気持ちいい」
思わず私が言うと、京介さんは隣でクスッと笑った。
灯台近くにある駐車場で車を降りると、窓を開けたときよりもずっと海の香りが強かった。
匂いが人の記憶回路を刺激するのは本当らしい。
海のそばにある実家を思い出した。
さり気なく私の手を取る京介さんに、胸が動悸で反応する。
その顔を見ると、微笑が彼の口角に浮かんだ。
「子供の頃によく連れてきてもらった海なんだ」
「そうなんですね」