溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
車で二時間弱。
滅多に出歩かない私からしたら、ちょっとしたプチ旅行だ。
そこに砂浜らしきものはなく、ゴツゴツとした岩場に波が打ちつけられている海だった。
その岩場へと渡る階段を下り、コンクリートの細い通路を京介さんに手を引かれて歩く。
人はまばらだ。
ときおり大きな波しぶきが上がって、その度に京介さんが私を抱き寄せるようにして水がかからないようにしてくれた。
些細な優しさが嬉しい。
「京介さんも、ああして遊んだんですか?」
岩場で遊ぶ家族の姿を見つけて指差す。
そちらを見た京介さんは、懐かしさに目を細めているように見えた。
「そうだね、父親はよく遊んでくれたけど、母親の方は遠くで見ていることが多かったな。『服を濡らさないで』とか『海に落ちないのよ』とか」
「それ、わかります」
思わず笑った。
うちも同じだ。
なんでもかんでも“心配”と結びつけて、『それは危ないから』とか『やめておきなさい』と。
「カニを見つけて大はしゃぎしたのをよく覚えているよ」