溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
「ほら見て」
彼の手のひらには一センチほどの薄茶色のカニが乗っていた。
「本当にいるんですね」
「かわいいだろ?」
子供みたいに無邪気に笑う。
屈託のない笑顔を見て、胸の奥が騒ぎ出す。
高鳴った鼓動は波の音で耳には届かないが、脈打つ感覚は確実にあった。
「こっちにはヤドカリもいるよ」
さっきの男の子が別の岩場を指差す。
「どこどこ」
嬉しそうな京介さんにつられて立ち上がったときだった。
ツルンと滑った足元に体勢を崩す。
「きゃっ!」
まるで吸い込まれるように海へと傾く身体。
「――ナオミ!」
京介さんが咄嗟に私の腕を掴む。
それでも支えきれなくて、なんとふたりとも岩場の間に落ちてしまった。