溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
◇◇◇
「ナオミ」
呼ばれて振り返ると、そこに京介さんが立っていた。
ここはどこだろう。
副社長室?
ううん、そんなはずはない。
だとしたら、彼が私を“ナオミ”と呼ぶはずがないから。
無機質な部屋には、私たちふたりだけ。
ゆっくりと近づいて来た京介さんは、私を見下ろす格好で立った。
表情のない顔だった。
いつも穏やかな彼が、無表情なんてことはないのに。
「もう会うのはよそう」
「……え?」
「じゃ」
京介さんが私に背を向ける。
……嘘。どうして。
思いもしない急展開に頭がついていかない。
始まりが突然なら、終わりも突然だなんて。
あまりにもあっさりとした彼の背中がどんどん小さくなっていく。
「――京介さん、待って!」
伸ばした手の先が暗闇に飲まれていく。
その闇が私自身も取り込もうとしていた。