溺愛副社長と社外限定!?ヒミツ恋愛
最上級の強敵、現る
街に着いたときには午後七時を回っていた。
二度目の“彩”は、今夜も静かな空気に包まれている。
出迎えてくれた涼子さんは京介さんを見て、『あら』という顔をした。
「今ね、舞ちゃんが来てるのよ」
「母さんが?」
「ええ。いつものようにひとりでね」
京介さんのお母様がこの店に。
それだけで背筋が伸びる思いがした。
「顔を出してきたら? ナオミさんの紹介はもう済んでいるの?」
私を見てから、京介さんに問いかける。
紹介なんてとんでもない。
じりっと後退りをして京介さんを見上げる。
首を思い切り横に振った。
私の反応で悟った涼子さんは、「いい機会だから、顔を見せてきたら?」とさらに勧める。
「そうですね」
京介さんまで同意しないでほしい。
懇願するように見つめたものの、私の意図はまったく汲み取ってくれない。
私の手を引いて、彼のお母さんがいるらしき部屋へと足を向けた。
涼子さんから「がんばってね」という決して頷けない声援が送られる。