短編集(ホラー)
ワンピースの少女・完
あれはもう・・・。

どのぐらい前のことだったか。



赤いワンピースを着た、5才ぐらいの少女と出会った。

「サンダル、片方ないの・・・。」

と、私に足を見せながら言った。

「よし、じゃぁ一緒に探そう。」

私は少女に手をひかれるまま、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。

とうとう町はずれの小さな林まで来た。

「ここにも来たの?」

私がそう聞くと、少女はコクンと頷いただけだった。

少し薄暗い林の中に、一歩ずつ一歩ずつ確実に足を踏み入れていった。

林の中間部ぐらいまで来たときに、ふと少女がいなくなっていたことに気がついた。

慌ててあたりを見回してみたが、静まり返った林の中には、風の音が虚しく響くだけだった。

数十分迷った挙句、一旦、町のほうに引き返すことにした。

林のほうに背を向けて、歩き出そうとしたそのときだった。

すうっと何かが足に絡みついた感覚がした。

恐る恐る下を向くと、それは白く、今にも消えてしまいそうな子供の手だった。

私は恐怖のあまり、意識を失った。
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