短編集(ホラー)
―ピ~ンポ~ン―

普通この時間なら、家の人への迷惑を考えてチャイムなど鳴らさないが、Kは両親の都合で独り暮らしだったため、私たちはためらうことなくチャイムを鳴らした。

「……寝てる?」

「ありえるかも…。」

「でも、家の中電気ついて無いっぽいよ?」

「だから寝てるのかも。」

「どうかなぁ…。」

Kが遅刻してくる理由は、たいていが寝坊だ。

それに、少し抜けているところもあったため、家の鍵をしょっちゅうなくした。

あげくのはてには、鍵を開けっ放しのまま学校にくることもあった。

「あたしん家、入ってもなんにも盗るもんないから。」

いつのまにか、それがKの口癖になるほど…。

「でも、家の中に入れなくなるのは困るから…。」

そう言って、Kは何ヵ月か前に私たちに合鍵をプレゼントした。

渡されたと言わずプレゼントとしたのは、こんなオマケつきだったからである。

「その代わり、秘密基地みたいに使っちゃっていいから。あたしも、ずっと1人は寂しいから。」
< 7 / 18 >

この作品をシェア

pagetop