秘密の交換をしよう
いち。
桜の満開、小鳥の鳴き声が春を知らせる時期。
私の所属する部署では、朝礼が行われている。
前に立つのは、元部長と新部長。
「今日から部長となりました、結木です。よろしくお願いします」
そう言って、微笑んだ結木さん。
女性社員は頬を赤らめる。
それを見た結木さんは、満更でもなさそう。
私はつい、眉をしかめてしまったけど。
「今日からはしっかり結木の指示に従うように!」
元部長が言った言葉も、彼女たちの耳には届いていないだろう。
みんな、結木さんに夢中なのだから。
だが、それを言って満足したのか、元部長はこの部署を出ていった。
でも、こんな調子で大丈夫なのかな。
きっと、誰も仕事が手につかなくなると思う。
「結木さん、下の名前教えてください!」
「彼女、いるんですか?」
「好きな食べ物は?」
< 1 / 188 >