秘密の交換をしよう
「どうやって入った?」
「出入り口にいた男子が入れてくれた。もともと力ずくで、なんて考えてなかったんでしょ。アンタにとっては暇つぶしなんだから」
僅かな隙間から見えた山崎の表情は、驚いていた。
「いつ見抜いた」
「二ヶ月前、アンタが凛をここに呼び出した日よ。どう考えたっておかしいでしょ。好きな子をいじめるにしたって、度が過ぎる。山崎は凛を好きなわけじゃないって」
そ、んな……
「それで? どうやって俺の暇つぶしに繋がったんだよ」
「凛がいないって気付いてすぐここに来たとき、聞こえてきたからよ」
ちらっと見えた香織ちゃんの表情は、怒っているようにしか見えなかった。
私なんかのために、ここまで怒ってくれる人がいたなんて、幸せなことだ。
ついさっき嫌なことがあったのに、それすらも忘れてしまうくらい、嬉しかった。
「二人してそんなに睨むなよ」
山崎はそう言うと、ドアに手をかけた。
「逃げるつもり?」
「一ノ瀬に味方が来た時点で、不利なんだよ」
山崎は香織ちゃんにそう言い返すと、部屋を出ていった。