秘密の交換をしよう
嘘だ。
しんみりした空気が嫌いなら、私がいじめられるように仕向けたりするわけない。
「よかったね、凛。これでいじめもなくなるんじゃ──」
「そう言えば、逞翔ってさ、一ノ瀬さんのこと、嫌ってなかった?」
前の席である香織ちゃんが振り向いて言った言葉を遮るように、女子の声が聞こえてきた。
声量では香織ちゃんのほうが大きかったけど、その言葉がやけに頭に残った。
「目障りだからこの学校からいなくなるよう、仕向けてほしい……って言われたもんね」
「ってことは、一ノ瀬さんが学校を辞めなかったから、逞翔が辞めたってことかな?」
どんどん、動機が早くなっていく。
まるで、体が心臓になったみたい。
「……サイテー」
「一ノ瀬さんのせいじゃん」
悪口の波紋はあっという間に広がるもので、私に向けられる香織ちゃん以外の女子の視線は、憎しみでいっぱいだ。
私はそれが、高校生活の終わりを告げる、合図のようにも感じた。
その勘は当たって、いじめはエスカレート。
今までのいじめが恋しくなるくらい、酷かった。
いじめがなくなったのは、三年生に進級してからだった。