秘密の交換をしよう
ご。
会社の最寄り駅に着き、ホームを出た。
最寄り駅といっても、今から五分近く歩くけど。
「あ、翼君だ。おーい! 翼くーん!」
会社に足を運ぶ途中、美穂ちゃんが前にいる高身長、短髪の男性に向かって叫んだ。
彼は足を止め、振り向いた。
確かに美穂ちゃんが言う通り、カッコいい。
周りの女性がそれを証明するかのよう。
すれ違うほとんどの女性が必ず、頬を赤く染めてるもん。
そんなイケメンが、不服そうな顔をして近付いてくる。
黒縁メガネがその表情をより怖く感じさせる。
「大声で呼ぶのはやめてください、上村さん」
目の前に来た彼は、本当に背が高い。
ハルさんと同じくらいか……それ以上かも。
「ごめんねー」
美穂ちゃんはおどけてみせた。
そのせいか、佐倉君はさらに睨んでくる。