秘密の交換をしよう
銀製のスプーンですくい、口に運ぶ。
「おいしい……!」
「お口にあってよかったです」
どんどん食べ進めてしまう。
すると、翼君は私を見てクスクスと笑った。
と思うと、翼君の顔が目の前にあった。
「なっ……」
翼君は私の唇の左横を、舐めた。
「あ、すみません。ビーフシチュー、ついてて……可愛らしくて、つい」
「あ、ありがとう……?」
この場合、なんて言えばいいのかわからなくて、私はそう言った。
「どういたしまして」
翼君は優しく微笑んだ。
お礼で、正解だったかな。
「一ノ瀬さん」
「は……」
名前を呼ばれて、返事をしようとしたのに、翼君に遮られてしまった。