秘密の交換をしよう
押し倒されて、言葉が出てこなくなったのだ。
そう思った瞬間、誰かのスマホが鳴った。
「……すみません」
翼君のだったみたいで、翼君は私の上から退いた。
テーブルの上に置いていたスマホを手に、別の部屋に入った。
一人にされて、だいぶ落ち着いてきた。
ビーフシチューを口に含むと、翼君の笑い声が聞こえてきた。
少し気になって、私は聞き耳を立てた。
「……ヒメさんこそ……ます?」
…………翼君、嘘ついてたんだ。
私、どうしてこんなに騙されやすいのかな。
「……本気……ですよ」
もう、翼君のことがわからなくなった。
また混乱しかけたときに、翼君の電話が終わった。
私は慌てて元の場所に戻る。
「ねえ、翼君。今の……彼女?」
翼君が座るかどうかのタイミングで、尋ねた。
「違いますよ」