秘密の交換をしよう


この期に及んで、まだ嘘、つくなんて……



「……本当のこと、言って」



自分でも驚くくらい、低い声になってしまった。



翼君は目を丸くしたと思えば、ため息をついた。


ため息をつきたいのは、私のほうだ。



「一ノ瀬さんもよく知ってる女性です。楪姫鈴」


「どうして、翼君が姫鈴さんと……」


「あー……全部話してもいいですけど、その前に一つ聞いてもいいですか?」



もう話す気もなくて、私は首を縦に振った。



「部長……結木さんのこと、本気で好きですか?」



どうしてそんなことを聞かれるのか、わからなかったけど、私は迷うことなく、頷いた。



「……ヒメさんの計画ですよ。結木さんを取り戻すための」


「計画?」


「結木さんは脅されたんです。一ノ瀬さんと別れないと、一ノ瀬さんをクビにする、と」



それで、どうして……



あ、そっか。



私、結木さんに二十五歳までは自分の稼ぎで生活していきたいって、言ったんだっけ。

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