秘密の交換をしよう
ハルさんは目を閉じているから、寝ているのかもしれない。
「……翼、失敗したのね」
姫鈴さんは、私を睨んだ。
足はすくみ、背筋が凍る。
「なにか用? 元カノさん」
姫鈴さんはソファーから降り、私のほうに歩みよる。
姫鈴さんが一歩踏み出せば、私は一歩後ずさる。
「……ハルさんを、返してください」
「なにをおっしゃってるのかしら? 遥真先輩は、姫鈴の婚約者ですのよ?」
「悪いけど。俺、婚約者になんかなった覚えないから」
「起きてたんですか? ハルさん」
姫鈴さんの背後で、ハルさんが起き上がるのが目に入った。
「凛の声で目が覚めた」
「……先輩は、もっと優しい方ですわ。そんな言葉遣いは……」
「俺を買い被りすぎなんだよ。勝手に王子様キャラ、作り上げるな」
ハルさんにしては珍しく、姫鈴さんに本性を見せていた。
どことなく不機嫌のようで、私は口出しが出来ない。